イッタラ・IITTALA のロゴとi マーク

デザインミュージアム(2018)。右側の六角形の箱は〈 i ライン〉用のパッケージ

イッタラ(Iittala)は、フィンランドを代表するガラス類やインテリアデザインを扱うブランドです。
現在、フィンランドの航空会社、フィンエアのビジネスクラスで使われている食器も、イッタラ製品です。

イッタラのロゴ

昨年2024年2月6日、長年使われたイッタラのロゴが刷新されるという発表から間もなく1年です。
ステッカーのリニューアルはなく、イッタラ製品に「 i マーク」のステッカーも貼られなくなりました。
これで、ステッカーを剥がすか剥がさないべきかという論争は、なくなるわけです。

2024年2月6日のインスタ。新しいロゴ。

参考までに、昨年2月のイッタラのロゴ変更のニュースを紹介します。

イッタラのクリエイティブリーダーのヤニ・ヴェプサライネン(Janni Vepsäläinen)氏は言います。問題は全体的なブランドの改革で、過去を壊すことではなく、ガラス製造といったイッタラブランドの核を明らかにすることです。ヴェプサライネン氏は新しいイッタラのロゴのベースカラーに、鮮やかな黄色を選びました。ヴェプサライネン氏によると、ガラスが高熱で溶ける色合いからインスピレーションを得たそうです。ロゴにはイッタラの設立年の1881が入っています。1)

イッタラの新しいロゴは、グラフィックデザイナーのアレクシ・タンミ(Aleksi Tammi)氏がデザインしました。新しいロゴと一緒に、タイプグラファーのゴーラン・ソダーストロン(Göran Söderströn)氏とタンミ氏が共同でデザインした新しいフォントも使われるようになりました。新しいフォントの名前は、〈アイノ(Aino)〉です。フィンランドのデザインの先駆者、アイノ・アアルトをオマージュしています。2)

この発表の後、ソーシャルメディアでは肯定的な意見もありましたが、大半が批判的なものでした。2)

ー なぜ、古い会社の象徴を壊すの? サルパネヴァのロゴは世界中で知られていました。悪い考え
ー なぜ、この心に響かないアイコニックなロゴに変えるの? 恥を知れ
ー エープリールフールまではまだ先、笑えない
ー 古いロゴには満足していませんでしたが、クラシックだからこそ象徴なのです。赤いシールは、子どもときにはじめて知ったロゴでした。戻ってきますように
ー 小さな赤いステッカーが恋しい
ー これは何かの冗談なの?

新しいロゴを手がけたタンミ氏はナイキやアディダスと、ソダーストロン氏はグッチ、フェールラーベン(スウェーデンのアウトドアブランド)と仕事をされた方々ですが、このソーシャルメディアの荒れ模様。どのようなお気持ちだったでしょう。

2024年から使用されるようになったロゴ
ヘルシンキのエスプラナーディにある旗艦店(2023)

赤丸の「 i マーク」

2024年6月にフィンランド・ヘルシンキのエスプラナーディにある旗艦店に行った際には、まだ 「 i マーク」のシールが貼られた製品が並んでいました。

これまで見慣れたイッタラの赤丸「 i マーク」は、ティモ・サルパネヴァ(Timo Sarpaneva)が「 i ライン」と呼ばれるガラスのシリーズのために、1956年にデザインしました。そのデザインが1960年代に入り、10年かけてイッタラ製品全体に使われるようになりました。2)

余談ですが、「 i ライン」のガラスシリーズは、イッタラにおいて色付きガラスの時代を切り開いた製品です。実用的なガラスシリーズには、ピッチャー、飲み物用グラス、ショットグラス、さまざまなサイズのボウル、お皿があります。色が調和するようにデザインされているので、組み合わせは自由です(デザインミュージアムの「 i ライン」のガラスシリーズの説明書きより)。

ティモ・サルパネヴァの〈 i ライン〉シリーズ

サルパネヴァがデザインした赤丸の地に白文字で「 i 」のマークは、1956年から1958年まで使われました(P-1)。
その後、赤丸い形に白字で「 i 」はそのままに、ステッカーの形が三角形に変わりました(P-2)。赤丸に「 i 」の下には「Made in Finland」の文字が入りました。これは1974年まで使われていました。
1974年から 1991年まで使われていたステッカーは、横長の長方形をしていました(P-3)。
1991年には、形が縦長の長方形にリニューアルされ、赤丸の下の文字が白字で「Iittala Finland」となりましたP-4)。
2001年からは、縦長の長方形に赤丸の下の文字が、黒字で「iittala」と書かれるようになりました(P-5)。

P-1 2017年フィンランド独立100周年のときのデザインミュージアムの展示
P-2 三角形のステッカー
P-5 2001年から使用されたステッカー

ロゴの刷新と赤丸の 「i マーク」のステッカーの喪失……ダブルショックが大き過ぎました。とくに「i マーク」のステッカーが貼られなくなるとは!
「i マーク」をステッカーを貼らないのはプラスチック削減、環境のためとはいえ使い続けて欲しかったです。

アンティーク界で「 i マーク」ステッカー付きの製品が、値上がりしませんように!

参 考

1)yle
 https://yle.fi/a/74-20073121
2)ILTA SANOMA
 https://www.is.fi/asuminen/art-2000010208313.html
ILTA SANOMA
 https://www.is.fi/asuminen/art-2000010207011.html
『イッタラ展 フィンランドのきらめき』朝日新聞社、2022〜2024

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