アルヴァ・アアルト サウナッツァロの村役場 Säynätsalon Kunnantalo(1949–1952)

中庭へと続く枕木でつくられた階段

2025年7月に訪れたサウナッツァロの村役場をご紹介します。
※カタカナで「セイナッツァロ」と表記している場合が多いのですが、フィンランド人の友人に発音を聞いたところ「サウナッツァロ」と言っていたので、ここでは「サウナッツァロ」と表記します。

サウナッツァロの村役場があるユヴァスキュラはフィンランドの中央にに位置し、ヘルシンキから約270km、ヘルシンキ中央駅からフィンランド鉄道のVRで3時間半。そこからさらにバスで30分ほどの場所、パイヤネン(Päijänne)湖に浮かぶ島のひとつにあります。

サウナッツァロの村役場は、フィンランドの建築家アルヴァ・アアルトの設計で、赤レンガ造りが特徴的です。

アアルトにとって村役場を手がけた1949年は、特別な年でした。最愛の妻、アイノ・アアルト(Aino Aalto)ががんのために亡くなりました。その喪失感は計り知れないですが、その後も、次々と後世に残る作品を手がけていきます。

1949年にサウナッツァロ市によってコンペが行われ、Curia(ラテン語で、「評議会」の意味)という提案タイトルで勝ち取り、1952年に完成しました1)。このコンペには、ヘルシンキスタジアムをトイボ・ヤンッティ(Toivo Jantti)のユルヨ・リンデグレン(Yrjö Lorenzo Lindegren )も参加していました2)

サウナッツァロの歴史

サウナッツァロの工業団地は、1897年に実業家のヨハン・パルヴィアイネン(Johan Parviainen)が手付かずのサウナッツァロ島を購入し、コルケアコスキ(Korkeakoski)にあった製材所を移転し、発展していきました。

1924年にサウナッツァロは独立した自治区となり、すぐにレヘティ(Lehti)島、ムーラッツァロア(Muuratsaloa)が併合されました。
サウナッツァロ周辺では、合板、ファイバーボード、レンガ、住宅などのさまざまな工場がありました。

1993年にサウナッツァロはユヴァスキュラ市に編入されました。

ヨハン・パルヴィアイネンからはじまった工場は、最終的にUPM-Kymmene Wood社の合板工場となり、残念ながら2020年に閉鎖されました。

現在、サウナッツァロの村役場とムーラツッアロの実験住宅(1953)は、ユヴァスキュラ市に管理されているようです。

サウナッツァロの村役場

サウナッツァロの村役場は、フィンランドにおけるアアルトのはじめての赤レンガ建築で4)、1993年までは役場として機能を担ってきました。

サウナッツァロの村役場。現在、右側の棟の1Fにはカフェ、床屋さん、古書店などが営業している
御影石の階段を上がると中庭が広がる

現在はサウナッツァロの村役場は内部を見学できるほか、誰でも利用できる図書館、古書店、床屋さん、カフェなどの店舗、ギャラリー、宿泊施設などを兼ね備えています。

本来は、小さな労働組合のために建てられたようですが、月日とともに役場と図書館の機能が拡大していきました5)

象徴的な赤レンガ造りの建物に取り囲まれた内部には、中庭、パティオがあります。アアルトは、この場所を人々の社交の場として位置付けました。
中庭にある長方形の噴水の脇には彫刻家Wäinö Aaltnen(ヴァイノ・ アアルトネン)の「Tanssijatar(タンシヤタル)」(「踊り子」の意味)の彫刻が あります。

彫刻家Wäinö Aaltnen(ヴァイノ・ アアルトネン)の「Tanssijatar(タンシヤタル)」
中庭
建物に入る入り口
ドアを開けるとロビーが広がり、議事場へと続く階段がある
入り口を入るとロビーがある
ロビーを抜けた先に廊下。廊下横にはギャラリー、ビデオ閲覧室、会議室などの部屋がある
ロビーを抜けた廊下を左に曲がるとさらに廊下が続く。その先は、宿泊施設として使われている部屋がある

当時1階には店舗、2階には管理オフィス、会議室、図書館、従業員の住居があり、その上、3階には、議事場があります。中庭や図書館のように、市民の憩いの親しみのある場と同じ建物にあるのが不思議なくらい、厳格な雰囲気を醸し出しています。図書館の明るさと議事場の暗さの対比が印象的です。

議事場の天井部分は木造で造られており、アアルトはperhoset(「蝶」という意味)名付けました6)
また、家具なども、村役場のためにアアルトがデザインしました。

図書館
図書館内
議事場へと続く赤レンガの階段。季節、時間によって高窓からの太陽の光の入り方が変わる
さらに階段を上がると議事場がある
階段を上がる踊り場の壁にアアルトの作品
議事場。扉は日本の引き戸タイプ
議事場内の天井を見上げるとアアルトがperhosetペルホセット(「蝶」という意味)名付けた木造物
アアルトがperhosetと名付けた木造物もまたアート
議事場内部
議長席側。赤バックの紋章はタンペレ市のもの
ギャラリー。日本人の作家の作品があった
村役場のガイドビデオ視聴室
会議室

サウナッツァロの村役場への行き方

サウナッツァロの村役場へはユヴァスキュラの街の中心地、Asemakatu(アセマ通り)のLinkkikeskusというバス停から16か21番のバスで、30分ほどSs-Kunnantalo 2というバス停で降り、歩いて2、3分で到着します。
バスは進行方向かって左側に座るとサウナッツァロの村役場に近づくにつれて、パイヤネン(Päijänne)湖が見え景色がよいです。

街の中心地、Asemakatu(アセマ通り)のLinkkikeskusというバス停から16、21番バスに乗る
16、21番バスは5−6乗り場
13、14時台は1時間に2本バスはある。今回サウナッツァロの村役場の宿泊のため、チェックインの15時にあわせて向う
ほとんどバスが停に停まることはないので、アプリで示された時間よりも早く到着

バスのチケットは、Linkkiというアプリで購入。旅行前にアプリをダウンロードしておくと安心です。私はPayで支払いました。その際Amexは使えませんでしたが、マスターも登録していたのでチケットを無事に買うことができました。フィンランドではAmexがほとんど使えないので要注意です。
チケットを買った時間から2時間まで乗り降り自由です。

スクショをしたところ少し怖いメッセージがでてきましたが、時間がたつと元通りの画面に戻ります。買った時間から2時間のカウントが始まるので、VRのチケットのようにスクショで二次元コードを車掌さんに見せればよい、というわけではありません。

Single ticket,adultをタップ
Zoneを選択。サウナッツァロの村役場があるSs-Kunnantalo 2のバス停はZoneBなので、ZoneAB,Single ticket,adultをタップ
Changeをタップすると支払い方法を変更できる。「Total4€」となっていますがひとつ前の画像通り、4.30€引き落とされていました
参 考

1)ALVARR AALTO ROUTE
 https://visit.alvaraalto.fi/fi/kohteet/saynatsalon-kunnantalo
2)武藤章『アルヴァアアルト』鹿島出版会,2005
3)Säynätsalo- seura ry
 https://saynatsaloseura.yhdistysavain.fi
4)JYVÄSKYLÄN TILAPALELU
 https://www.jyvaskyla.fi/tilapalvelu/artikkelit/saynatsalon-kunnantalon-uusi-kevat
5)平山達・訳『建築ガイドブックアルヴァー・アアルト The Alvar AaltoGuide』
 丸善株式会社、2009
6)サウナッツァロの村役場の宿泊した部屋にあったファイル(WELCOME TO THE SAYNATSALOTOWN HALL)

Säynätsalo Town Hall
 https://tavolobianco.com/en_US

Säynätsalo Town Hall
 https://tavolobianco.com/en_US/news/short-visit-to-saynatsalo/opastus-kunnantalo

ガイドツアーに参加しないと建物の中に入れない場所もありますが、サウナッツァロの村役場は、入場料を払えば、個人で外観はもちろん中も見学できるようです。
英語とフィンラン語によるライブガイドツアーもあります。

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