
フィンランドには現在、世界遺産が7つあります。2026年夏、8番目の世界遺産が誕生するかもしれません。
ラウマ旧市街(ラウマ)1991
スオメンリンナの要塞(ヘルシンキ)1991
ペタヤヴェシの古い教会(ヘルシンキ)1994
ヴェルラ砕木・板紙工場(ユヴァスキュラ)1996
サンマルラハデンマキの聖堂時代の石塚群(ラウマ)1999
シュトゥルーヴェの三角点アーチ観測地点群(アラトルニオ教会)(ケミ)2005
クヴァルケン群島* 2000
*クヴァルケン群島は世界自然遺産、それ以外は世界文化遺産
フィンランド教育文化省は、アルヴァ・アアルトの13の建物群を Aalto Works としてユネスコの文化遺産リストに登録申請を 2025年1月28日に行いました。
世界遺産委員会の決定は、2026年夏に予定されています。
13の建物群は次のとおりです。
① パイミオ療養所 — Paimion Parantola — Paimio Sanatorium※2
1929〜1933 パイミオ
結核病院として設計され、家具、照明器具、例えばドアノブといった細部に至るまで、アアルト夫妻の設計によるものです。
1960年代には療養所近くに職員宿舎が設計されました。病院としての機能は2010年代まで続きました。
2026年から2029年まで改修工事が行われる予定です。
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② アアルトハウス — Villa Aalto — Aalto’s home※3
1935〜1936 ヘルシンキ
住宅とオフィスの機能を兼ね備えた建物として設計されました。
オフィス側の建物は白く塗装されたレンガ造りです。


③ スニラパルプ工場ハウジングエリア— Sunilan asuinalue — Sunila Residential Area※4
1936〜1938、1947、1951~1954 コトカ
スニラパルプ工場は、ピョーティネン島に建設され、住宅地は、本土に建てられた。建設の第一期には、工場長邸のカントラ、エンジニア用の長屋ランタラ、監督者用の長屋マケラ、労働者のアパート、マンテュラとホンカラ、維持管理用の建物などが完成しました。これらの建物が建てられたエリアは、ヴァッリニエミと呼ばれるようになりました。
住宅地建設の第2期は、スニラ社、A・アールストロム社、キュミ社の共同作業として行われました。各社がそれぞれの自社従業員のための住宅を確保しました。
④ マイレア邸 — Villa Mairea — Villa Mairea※5
1939 ポリ
マイレア邸は、A.アールストローム社の社長であるハリー・グリクセン(Harry Gullichsen)、マイレ・グリクセン(Maire Gullichsen)夫妻のために建てられました。
マイレ・グリクセンは、アルヴァ・アアルトとアイノ・アアルトとともにインテリアデザイン会社、アルテック(Artek)の創業者です。
⑤ サウナツァロの村役場 — Säynätsalon kunnantalo — Town Hall※6
1950〜1952 サウナツァロ
サウナッツァロの村役場は、村役場の機能のほかに図書館、商業施設、職員用住宅が備わっています。旅行者も職員用住宅に宿泊できます。
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⑥ ムーラッツァロの実験住宅※6
— Muuratsalon Koetalo — Experimental House 1952〜54 ムーラッツァロ
エリッサとアルヴァ・アアルト夫妻が設計したアトリエ兼、別荘です。レンガ、タイル、石積みの実験を保存が保存されいます。
夏の間、ガイドツアーが開催され一般公開されています。
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⑦ 社会保険機構本庁舎※6
— Kansaneläkelaitoksen pääkonttori (現在 Kela-FPA)
— Kansaneläkelaitos Head Office 1952〜1956 ヘルシンキ
建物内にある図書館は、アルヴァ・アアルトがてがけたヴィープリーの図書館(1927〜1935)を彷彿させます。


⑧ ユヴァスキュラ大学、アアルトキャンパス※7
— Kasvatusopillinen korkeakoulu(現在 JYVÄSKYLÄN YLIOPISTO)
— Jyväskylä College of Education, Jyväskylän yliopiston päärakennus
— Main Building, University of Jyväskylä
1951〜1970 ユヴァスキュラ
現ユヴァスキュラ大学は、司祭でもあり小学校主任査察官であったUno Cygnaeus (ウノ シグネウス)が、フィンランド初の教員養成セミナとして1863年に神学校としてスタートしました。
当時は教育学の科目に重きが置かれ、体育も重視されました。1937年に神学校から高等教育機関、ユヴァスキュラ教育大学になりました。1966年には現在のユヴァスキュラ大学となりました。
ユヴァスキュラ大学のキャンパスはセミナーアリンマキ、マティラニエミ、イリストンリンネの3つのエリアに分かれています。
大学の本館はセミナーアリンマキにあり、アルヴァ・アアルトが設計しました。


⑨ アアルトスタジオ— Alvar Aallon ateljee — Alvar Aalto Studio※8
1954〜1955, 1962〜1963 ヘルシンキ
アアルトは、以前、事務所だった自邸から歩いて10分弱のところに建物を設計しました。
1962〜1963年にかけて食堂が増築されました。
アルヴァ・アアルトが亡くなる1976年まで指揮し、その後はアルヴァの2番目の奥さんのエリッサが率いていました。
現在は、ガイドツアーが開催され一般公開されています。


⑩ 文化の家 — Kulttuuritalo — House of Culture※9 1955〜1958 ヘルシンキ
文化の家の計画は1944年にはじまりました。フィンランドでは19世紀以降、音楽、演劇などの活動が活発になり、より広い空間が必要になりましたが集会や催しものを開催するための会場が不足していました。
伝説によると、アアルトは最初の設計をKlubi(フィンランドのタバコメーカー)のマッチ箱に描いたそうです。


⑪ スリークロスチャーチ— Kolmen Ristin kirkko — Church of the Three Crosses※10
1958 イマトラ
イマトラの都市計画の一環として設計されました。実用と美的要素が融合した教会です。
大きな教会ホールは、可動式の間仕切りで3つの空間に分割することができます。
湿気による建物のダメージが深刻で、2020年11月より閉鎖されていましが、外装の修復をメインとした第1段階めの工事が2024年1月からはじまり、今年の5月に終わりました。9月からは見学が予約制で行われているようです。改修工事は段階的で、見学は一部のみです。全体の修復工事は来年2月に終わる予定です。
資金不足で、日本でも資金を募集するイベントがコロナ禍にオンライン行われました。
⑫ セイナヨキのシビックセンター
— Seinäjoen kaupunkikeskus — City Center Lakeuden Risti
— Cross of the Plains Church※11 1960〜1987 セイナヨキ
セイナヨキのシビックセンターは、ラケウデンリスティ教会(1960)、市庁舎(1962)、図書館(1965)、教区センター(1966)、合同庁舎(1968)、市立劇場(1987)で構成されています。
すべてがまとまって建てられているので、1日もあれば十分に見て回ることができます。
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⑬ フィンラディアホール— Finlandia-talo — Finlandia Hall※12 1967〜1975 ヘルシンキ
フィンランディアホールは1971年12月に開館し、会議棟は1975年に使用可能となりました。2022年から2024年にかけて改修工事が行われました。改修工事の原因のひとつは、建物を覆う大理石のひび割れでした。
2025年にリニューアルオープンしたフィンラディアホールの中には、カフェ、ショップも併設されているので、イベントに訪れる人以外も楽しめる場所になりました。
また、かつては建物の従業員用として建てられたアパートメントに宿泊することもできます。アイノとエリッサというアルヴァ・アアルトのふたりの妻の名前がついた部屋です。4名まで宿泊できるとはいえアイノは390€、エリッサは370€です(2025年12月)。


13の建物群は、北欧の福祉国家として、さらに国際社会の一員として発展してきたフィンランドを象徴する重要な建造物です。
来年の世界遺産委員会の発表が楽しみです。
※1
The Finnish Heritage Agency
https://www.museovirasto.fi/en/about-us/international-activities/world-heritage-in-finland
※2
ARVARL AALTO:PAIMION PARANTOLA
https://www.alvaraalto.fi/arkkitehtuuri/paimion-parantola/
※3
ARVARL AALTO:ALVAR AALLON KOTITALO
https://www.alvaraalto.fi/kohde/alvar-aallon-kotitalo/
※4
ARVARL AALTO ROUTE:Sunilan selluloosatehdas ja asuinalue
https://visit.alvaraalto.fi/fi/kohteet/sunila/
Visit Sunila
https://www.visitsunila.fi/en/
ANTHROPOLOGY OF ARCHITECTURE
https://www.anthropologyofarchitecture.com/from-decay-to-maintained-heritage
Sunila ARVARL AALTO
https://www.alvaraaltosunila.fi/en/frontpage
※5
アルヴァ・アアルト財団 ギャラリーエークワッド編『AINO & ALVAR AALTO SHARED VISIONS アイノとアルヴァ 二人のアアルト』国書刊行会、2021
※6
ARVARL AALTO:SÄYNÄTSALON KUNNANTALO
https://www.alvaraalto.fi/arkkitehtuuri/saynatsalon-kunnantalo/
※7
JYVÄSYKLÄN YLIOPISTO
https://www.jyu.fi/fi/meista/yliopiston-ja-kampuksen-historia
https://www.jyu.fi/fi/tiedemuseo/tiedemuseon-verkkonayttelyt#mobiilioppaat
https://www.jyu.fi/fi/tiedemuseo/kasvitieteellinen-puutarha/omatoimikierros-seminaarinmaen-puutarhaan
※8
ARVARL AALTO:ALVAR AALLON ATELJEE
https://www.alvaraalto.fi/kohde/alvar-aallon-ateljee/
※9
HISTORY OF THE HOUSE OF CULTURE
https://kulttuuritalo.fi/en/information/about-house-of-culture
※10
ARVARL AALTO:KOLMEN RISTIN KIRKKO
https://www.alvaraalto.fi/arkkitehtuuri/kolmen-ristin-kirkko/
Imatran seurakunta Kolmen Ristin kirkko
https://www.imatranseurakunta.fi/kolmenristinkirkko
yle「Köyhä seurakunta restauroi miljoonilla Alvar Aallon mestariteoksen」
https://yle.fi/a/74-20067108
※11
Seinäjoki
https://www.seinajoki.fi/kulttuuri-ja-liikunta/kulttuuri/kulttuurikohteet/alvar-aalto-seinajoella/
※12
Visit Finland:Finladia Hall
https://www.visitfinland.com/ja/purodakuto/9ec569a2-d05c-4f06-a6b5-27ca756d2c4f/finlandia-hall/
ARVARL AALTO AALTO FINLANDIA-TALO
https://www.alvaraalto.fi/arkkitehtuuri/finlandia-talo/
FINLANDIA TALO HALL
https://finlandiatalo.fi/finlandia-talo/finlandia-homes/
ARVARL AALTO:AALTO WORKS NOMINATION TO BE SUBMITTED TO UNESCO WORLD HERITAGE COMMITTEE
https://www.alvaraalto.fi/en/news/aalto-works-nomination-to-be-submitted-to-unesco-world-heratge-committee
The Architectural Works of Alvar Aalto – a Human Dimension to the Modern Movement
https://whc.unesco.org/en/tentativelists/6509
The Finnish Heritage Agency
https://www.museovirasto.fi/en/about-us/international-activities/world-heritage-in-
finland
Aalto Quest – 100 Journeys of Discovery
https://tavolobianco.com/en_US/news/aalto-quest-ndash-100-journeys


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