元首相岸信介、晩年の邸宅 東山 旧岸邸


旧岸邸は、1957年から1960年まで内閣総理大臣(第56・57代)を務めた岸信介きしのぶすけ(1896〜1987)が晩年の17年間を過ごした住まいです。東名高速道路が全線開通した同年の1969年に、竣工しました。
静岡県御殿場市にあります。、東京との交通が便利という理由でこの地が選ばれたようです。
現在は登録有形文化財に指定されています。
設計は、文化勲章を受章した建築家・吉田五十八よしだいそや(1894〜1974)です。旧岸邸は、吉田五十八の集大成ともいえる作品のひとつです。

2階建ての2階は、車椅子の方が見学できないという理由で非公開になっていますが、1階の大部分と庭は見学することができます。

ガイドの方が30分ほど邸宅内をガイドをしてくれますので、ぜひ案内してもらうとよいでしょう。

旧岸邸は、茶室のある数寄屋建築に洋風の生活スタイルを取り入れ、モダン建物として評価されたました。建設当時にの最新技術、建材などが多く取り入れられました。
たとえば、中庭にかかる伝統的なすだれの素材は、アルミが用いられています。

中にかかるすだれはアルミ製

邸宅は、3つのゾーンに分かれています。政治家として多くの来客が訪れることを想定し、広くとられたパブリックゾーン、岸夫妻のプライベートゾーン、生活を維持管理するための管理棟ゾーンです。

玄関ホール。一般家庭よりもかなり広い。来客はこのスペースで待つ。応接セットは吉田五十八のデザイン。ソファ、テーブルの脚は竹でできている
玄関ホールから書斎、和室に向かう廊下は当時一段低く、磁器タイルが敷かれていた。現在はバリアフリーのため玄関ホールと段差なくフローリングとなり、茶室に行くことができる
当時敷かれていた磁器タイル
書斎兼応接室。家具は胡桃の木で作られ、吉田五十八のデザイン
書斎から和室に向かう途中に水屋がある。水が飛び跳ねにくいように12cm縁が立ち上がっている。すのこが2段になっている
水屋の蛇口は当時のもの。電気のスイッチ類も当時のまま
8畳の和室
岸信介自筆の掛け軸。「幽静」
6畳と8畳の和室の2間。一般的に和室にある欄間はなく、吹き抜けになっている。吊り束がないのも旧岸邸の特徴
和室からは庭が望める。障子の欄間から吊り上げ障子の欄間、畳の縁までが縦のラインが一直線
和室の地袋にはスチーム暖房機が設置されている。扉はスチール製
吉田茂元内閣総理大臣(1878〜1967)から寄贈された灯篭
居間にある大きなテーブルの天板に庭の景色が映る
岸元首相はこのソファに座り四季の移ろいを眺めていた???
食事室。この場で岸信介は写経を行い、高野山の金剛峯寺に納めた
吉田五十八と東京藝術大学で親交のあった縣治朗(あがたじろう)の金蒔絵
伊藤博文(1841〜1909)邸から寄贈された灯篭
庭に散るノムラモミジの葉
広々したキッチン
キッチンにある呼び出し機。呼ばれるとライトがつく仕組み。
階段を照らすペンダントライト
女中さんの部屋。当時3人が働いていたそう

静岡県御殿場市にある東山旧岸邸は2009年からは、羊羹ようかんで有名な虎屋のグループ会社が運営・管理しています。
旧岸邸を見学したあとにゆっくり、とらやカフェで休憩をしたかったのですが、大行列のうえにお菓子も売り切れのものが多く、泣く泣く断念しました。

東山旧岸邸、とらや工房は竹林の道を抜けて行く
東京赤坂にあるとらや赤坂店。建築家・内藤廣が設計した

東山旧岸邸
開館時間:4〜9月 10:00〜18:00/10〜3月 10:00〜17:00
入館料:一般300円/小中学生150円

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