【フィンランド】エスポー近代美術館:タピオ・ヴィルカラ、ルート・ブリュック

エスポー近代美術館:EMMA(Espoon modernin taiteen museo)は、フィンランド・エスポーのタピオ地区にあるフィンランド最大の美術館です。
建物はかつて 印刷工場で、設計はAarno Ruusuvuori (アアルノ・ルースヴオリ:1925〜1992)です。
1960年代のブルータリズム(Brutalism)の典型的な建物で、タピオ地区のランドマークになっています。

Tapio Wirkkala(タピオ・ヴィルカラ)、Rut Bryk(ルート・ブリュック)、Alvar Aalto(アルヴァ・アアルト)、Birger Kaipiainen(ビルゲル・カイピアイネン)、Oiva Toikka(オイヴァ・トイッカ)など、フィンランドを代表するアーティストの作品を思う存分鑑賞できるので、1日せめて半日はエスポー近代美術館に時間をとることをおすすめします。

ブルータリズム(Brutalism):1950〜70年代に流行した建築様式。例えばコンクリートの素材をそのまま見せる「打ち放しコンクリート」など、素材や質感を重視し装飾を排除したミニマルなデザインが特徴

サースタモイネン財団タピオ・ヴィルカラ&ルート・ブリュック財団

エスポー近代美術館は、フィンランドを代表するサースタモイネン財団タピオ・ヴィルカラ&ルート・ブリュック財団の2つの財団と連携しています。

サースタモイネン財団のアートコレクションは、1910年代にフィンランド東部クオピオの実業家一家の個人コレクションとして始まりました。
現在、サースタモイネン財団から寄託された作品は、3,000点以上にもおよび、常設展でみることができます。

タピオ・ヴィルカラ&ルート・ブリュック財団は、Visible Storage(「見える収蔵庫」)と呼ばれる特別展示室に、タピオ・ヴィルカラ(1915–1985)とルート・ブリュック( 1916–1999)の美術品、実用的なデザイン、試作品、アーカイブ資料、スケッチなど、およそ2500点が展示されています。

また、美術とアートコレクターであるキョスティ・カッコネン氏のコレクション約1400点も、エスポー近代美術館に貸与されています。

Katseluvarasto 見える収蔵庫

前述したように、タピオ・ヴィルカラとルート・ブリュックの作品は、「Katseluvarasto(カツェルヴァラスト)」(見える収蔵庫)と呼ばれる特別展示室に展示されています。展示されていない作品も木箱や棚にしまわれた状態で展示スペースと同じ場所に保管してあります。そのために展示室の名前が「見える収蔵庫」と呼ばれているのですね。
展示作品は完成品は当然展示されていますが、制作過程のものやカラーサンプルなども見ることができます。
Katseluvarasto」(見える収蔵庫)は、2017年にオープンしました。

BRYK&WIRKKALA「見える収蔵庫」
展示スペース
保管か展示か???
タピオ・ヴィルカラが開発したリズミックプライウッドの「レヒティヴァティ」などの作品の裏側には修復士やカメラマンが作業する工房をみることができる
タピオ・ヴィルカラとルート・ブリュックのコラボ。形はタピオ・ヴィルカラ、装飾デザインはルート・ブリュックが担当。カップにあわせた紙にスケッチしていることがわかる(2023年撮影)
ローゼンタール社のコーヒーカップ、ウインターレイゼ・冬の旅。(2023年撮影)
型押し成形による新たな技法に移行した集大成の作品「聖体祭」
型押しの型

ルート・ブリュックは、Vaasan Puuvilla 社(ヴァーサ綿工場)のために、テキスタイルをデザインしました。
セイタシリーズ(Seita sarja)は、1960年に発売された最初のテキスタイルです。
ヴァーサ綿工場は1963年にフィンレイソンと合併しましたが、その後も生産され続けました。
反物だけではなくハンカチやタオルなども製品化され、最後のデザインは、1980年に生産が終了しました。
「セイタ(Seita)」は、ラップランドの自然やサーミ人を連想させる言葉です。タピオ・ヴィルカラ、ルート・ブリュック夫妻が夏を過ごしたラップランドとの深い関わりを示しています。

セイタ・シリーズ
セイタ・シリーズ。2023年に訪れた際は、なぜか長方形に切りとられていた!
板を何層にも重ねたリズミックプライウッドのオブジェ
1965年イタリア・ヴェネツィアのムラーノ島のガラス工房ヴェニーに招かれる
フィンラディアのウォッカボトル

Ultima Thule ウルティマ・ツーレ

「Ultima Thule ウルティマ・ツーレ」はタピオ・ヴィルカラの代表作のひとつです。もともとは、1967年のモントリオール万博のフィンランド館のために制作されました。
「ウルティマ・ツーレ」は「知られざる世界の果て」を意味し、タピオ・ヴィルカラはフィンランドのラップランドのレメンヨキ川周辺の風景をもとに制作したそうです。
1968年のメキシコシティオリンピックでも展示されました。

今年4月に東京ステーションギャラリーで催された「タピオ・ヴィルカラ 世界の果て」展では、パネルでの紹介でした。
東京での展覧会は終了していますが、10月13日までは市立伊丹ミュージアム(兵庫)、10月25日(土)からは 岐阜県現代陶芸美術館(岐阜)へと巡回されます。

「Ultima Thule ウルティマツーレ」木目が美しい
家具職人のマルッテイ・リンドクヴィストの手を借りタピオ・ヴィルカラは斧、ヤスリ、ナイフで仕上げた
高さ4m、幅9mのレリーフは23のパーツで組み立てられている。リズミックプライウッドの作品で最大のもの

エスポー近代美術館
EMMA – Espoon modernin taiteen museo
 月:休み
 火・土・日:11:00〜17:00
 水・木・金:11:00〜19:00
 入場料:おとな €20

開館日、開館時間などはHPなどで事前にご確認ください。

参 考

EMMA
 https://emmamuseum.fi/en
Taiteilija Rut Bryk ja Seita-sarja
 https://lauda.ulapland.fi/handle/10024/61989
ブックレット『タピオ・ヴィルカラ世界の果て』2025

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